公益財団法人 明治安田厚生事業団

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健康づくりウォッチ

官民連携で中小企業の健康経営を推進

健康格差をこれ以上広げないためにも、健康経営に取り組む中小企業を増やす必要があります。革新的な戦略になり得る仕組みについての研究成果を紹介します。

自治体と民間企業との連携により中小企業へのアウトリーチを実現


健康経営※1は大企業で盛り上がりを見せていますが、中小企業への広がりは限定的です。その結果、企業規模による健康格差の拡大が懸念されていますが、メディアキャンペーン等の広報戦略だけでは、リソースに限りがある中小企業には十分に響かないのが現状です。

そこで横浜市と協力し、民間企業の営業職員が市内企業を訪問して横浜健康経営認証※2の取得をサポートする“アウトリーチ型支援”の仕組みを考案し、学術的に評価するプロジェクト※3を立ち上げました。調査の結果、この仕組みを導入した後に、横浜健康経営認証を新たに取得する企業が約1.7倍に増加したことがわかりました。新規取得企業のうち従業員50名未満の小規模企業の割合は、57%から75%に増加しました(図1)。
図1 横浜健康経営認証 新規取得企業の年次推移

※1:健康経営®はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※2:横浜市は、従業員の健康づくりに取り組む市内の企業を「横浜健康経営認証事業所」として認証しています。
※3:本研究は、Yokohama Linkworker Project(Y-Link Project)の一環として実施されています。

大企業よりも中小企業で健康増進プログラムの実施が増加


では、この仕組みをきっかけに横浜健康経営認証を取得した企業は、実際に従業員の健康づくりに取り組んだのでしょうか?

追跡調査の結果、取得企業は取得していない企業と比べて、半年~1年半後に、職場での健康増進プログラムを2~7倍も実施していることが明らかになりました。この傾向は、特に従業員50名未満の小規模企業で顕著でした(図2)。これらの結果を踏まえると、新たに立ち上げた“官民連携によるアウトリーチ型の支援”は、中小企業に健康経営を広めるための革新的な戦略になり得ると考えられます。
図2 職場における健康増進プログラムの実施状況

昨今、さまざまな分野で官民連携の取り組みが推進されています。健康づくりの領域においても、国民の健康増進に貢献する、新しい官民連携の仕組みづくりが期待されます。

【出典】Kaiら, Frontiers in Public Health (2024)


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著者
甲斐 裕子 Kai Yuko
公益財団法人 明治安田厚生事業団
体力医学研究所 副所長/上席研究員

専門分野 運動疫学、健康教育学、公衆衛生学
主な研究テーマ 運動とメンタルヘルス、座りすぎの健康影響
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