公益財団法人 明治安田厚生事業団

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健康づくりウォッチ

持久力を高めて脳を活性化させよう

持久力の高い高齢者は、認知機能の一つである作業記憶能力も高いことが分かっています。そのメカニズムが徐々に明らかになってきました。

高齢者の持久力と脳の活動、作業記憶能力の関係


認知機能のひとつである作業記憶能力は情報を一時的に保持・操作する能力で、主に脳の前頭前野がその働きを担っています。会話や計算をする際に必要な能力で、日常生活を営む上で重要な役割を果たしますが、加齢による脳の衰えとともに低下しやすいことが明らかになっています。

これまでの研究で、持久力のある高齢者ほど作業記憶能力が高いことがわかっています。また作業記憶能力の高い高齢者ほど、作業記憶能力を測定するテスト中に前頭前野の広い範囲を使っていること、すなわち脳が活性化することが報告されています。そこで私たちの研究では、持久力のある高齢者の作業記憶能力の高さと、前頭前野が活性化することの関連性について調査しました。

持久力のある高齢者ほど脳を活性化させている


47名の高齢者と49名の若年成人に、作業記憶能力を評価する課題に取り組んでもらい、その最中に「近赤外光脳機能イメージング装置」で脳の前頭前野の活動を測定しました。また高齢者には運動テストを実施してもらい、持久力の指標である「有酸素能力」を測定しました。

高齢者と若年成人の結果を比較すると、高齢者の作業記憶能力は若年成人に比べて劣る一方で、測定中に前頭前野の広い範囲が活性化していることがわかりました(図)。また高齢者のなかでは有酸素能力が高い人ほど前頭前野の活動が顕著であり、作業記憶能力が優れていることがわかりました。これらの結果から、持久力の高い高齢者ほど脳の広い範囲を使っており、このことが作業記憶能力の高さにつながっている可能性が見出されました。高齢期においては、運動習慣をつけて持久力を維持することが、認知機能の維持に貢献するかもしれません。

身体を動かすことの健康効果は多くの研究により証明されていますが、なかなか続かない方も多いかもしれません。いきなり無理な運動を始めるのではなく、楽しく継続できるウォーキングなどから始めるのはいかがでしょうか。

【出典】Hyodoら, Imaging Neuroscience (2024)


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著者
兵頭 和樹 Hyodo Kazuki
公益財団法人 明治安田厚生事業団
体力医学研究所 研究員

専門分野 運動生理学、スポーツ神経科学
主な研究テーマ 運動が高齢者の認知機能に与える効果
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