健康づくりウォッチ
2023年6月5日
徒歩や自転車での移動意欲を高めて健康長寿
目的地が近くても、つい車やバスを利用していませんか?普段からできるだけ、徒歩や自転車で移動する意欲を高く保つことが健康長寿の秘訣です。
徒歩や自転車で移動しようと思う距離はどのくらい?
徒歩や自転車による活動的な移動は、日常の活動量の大きな割合を占めていますが、加齢によって大きく減少します。では、高齢者が徒歩や自転車で移動しようと思える距離(徒歩や自転車移動の許容距離)はどのくらいでしょうか?私たちの調査では、多くの高齢者にとっては、徒歩で約1km、自転車で約2kmが許容距離であることがわかりました。
一方で、徒歩で300m以内、自転車で500m以内といった短い距離しか移動意欲のない人も一定数おり、そのような人は、外出や社会交流が少なく、抑うつ傾向が強い等の特徴がありました。では長期的に見た場合、許容距離が短い人の予後(要介護化や死亡)はどうなのでしょうか?
【出典】Tsunodaら, Journal of Population Ageing(2021)
徒歩で1km、自転車で2kmの移動意欲が健康長寿のカギ
私たちは8年間の追跡研究を行い、許容距離と要介護化・死亡リスクとの関連性を検証しました。その結果、徒歩で500m以内の人は、1km以上の人に比べて要介護化リスクが高いことがわかりました(図1)。
同様に、自転車で1km以内の人は、2km以上の人に比べて要介護化リスクが高くなっていました。死亡リスクについても、徒歩で300m以内または自転車で1km以内の場合にリスクが高まりました(図2)。
一方、徒歩で1km以内または自転車で2km以内の人では、より長距離の許容者と比べても、統計的な要介護化および死亡リスクの増加は見られませんでした。
これらのことから、徒歩や自転車移動の許容距離が短いことは、要介護化および死亡リスクであり、歩行で1km、自転車で2kmの移動意欲があることが、リスクを上げない目安となることがわかりました。
普段から徒歩や自転車の移動意欲を高く保つことが、健康長寿の秘訣であるといえます。
【出典】Tsunodaら, Health & Place(2023)
※PDF版はこちら
著者
角田 憲治
山口県立大学 社会福祉学部 准教授
公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所 客員研究員
専門分野 老年体力学、公衆衛生学、疫学
主な研究テーマ 身体活動・運動による生活習慣病予防、介護予防
角田 憲治
山口県立大学 社会福祉学部 准教授
公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所 客員研究員
専門分野 老年体力学、公衆衛生学、疫学
主な研究テーマ 身体活動・運動による生活習慣病予防、介護予防