研究所レポート
2024年11月25日
髙橋研究員に聞きました
理学療法士を目指したのはいつ頃からですか?何かきっかけがあれば教えてください。
もともと誰かの役に立つような仕事に就きたいと思っており、消防士か医療・福祉系に興味がありました。
高2の終わりに進路選択に迫られていた時に、同居していた祖父が要介護状態になり、リハビリテーションを受けるようになりました。そのことがきっかけで、自分もリハビリテーションの職に就きたいと思うようになり、理学療法士の道を選びました。
理学療法士から、研究者にシフトチェンジしたきっかけや、転機などがありましたか?
学部生の時からなんとなく研究に興味がありましたが、まずは臨床経験を積もうと思い、急性期の総合病院に理学療法士として3年間勤務していました。それからやっぱり研究がしてみたいと思い、大学院の修士課程に進学しました。当時は循環器疾患のリハビリテーションについて研究をしていましたが、病状の悪化と入院を繰り返す患者さんをみていると、病気になる前から予防していくことが重要と考えるようになりました。そのため、博士課程では病気や介護状態の予防について勉強できる大学院に進学し、高齢者の介護予防について研究する研究者へとシフトしていきました。
入所する前には、どのような研究をしていましたか?
地域の高齢者を対象とした介護予防に関する研究です。
主な研究として、ICT機器を活用した高齢者の心身機能の評価方法の開発などを行っていました。地域の高齢者の体力や認知機能を評価する際に、測定する専門的な人材(マンパワー)の確保や測定会場の広さなどが大きな課題となります。そこで、現場での生の声を吸い上げ、問題を解決すべく、例えば簡易的な床反力計(体重計のような機械)を用いて、椅子から立ち上がるだけで身体機能の状態を評価する方法や、タブレットPC内で認知機能検査を行うシステムなどを開発していました。
一方で、研究だけではなく、現場における実装や実務的なことも重要だと考えており、都内の自治体における介護予防事業の支援も行っていました。研究で得られた知見をもとに、どうすれば効果的な事業になるか担当者にアドバイスをしたり、一緒に考えながら事業を支援してきました。
研究所にきて良かったところがありますか?
自分の興味に近いプロジェクトに関わることができ、とてもやりがいを感じながら仕事ができています。職員全員と距離が近く、所内の一体感があり、役職や部署間での壁が低いところが、この職場の良いところだなと感じています。
また、研究所が郊外の自然豊かな場所にあり運動場も併設しているため、通勤・勤務のストレスが少なく、休み時間に運動ができるのは大きな魅力です。とても生活の質(QOL)が上がりました!
入所早々からとてもメンバーと馴染んでいると聞きましたが、何か秘訣がありますか?
早々から馴染めた(?)のは私自身に秘訣があるのではなく、むしろ研究所の風通しのいい雰囲気のおかげじゃないかなと思います。
入所当初、打ち合わせの場面で上司の意見に対して若手研究員が「いや、それは違うと思います!」とはっきり意見をする場面があり、ビックリしたのを覚えています。どんな立場からでも何でも発言できて、全職員が対等でいられる風土がこの研究所には根付いていると感じています。
現在取り組んでいる研究はどのようなテーマですか?
現在は、オンラインを活用した運動教室である「SOFT(Slow Online FiTness)」を八王子市内に普及・実装するプロジェクトに携わっています。SOFTはオンラインで講師と各会場を繋ぎ運動教室を行うプログラムであり、少ないマンパワーで効果的な介入ができる仕組みとなっています。介護予防効果だけでなく、いかに効果的・効率的に地域に普及・実装するかに関しても研究を行っています。
『SOFTに参加して体力がついてきた』や『SOFTに参加してお友達ができた』といったうれしい声もいただいています。
将来的には、運動教室だけでなく、栄養(料理や食事など)や趣味(カラオケや手芸など)などの教室も配信し、多様なニーズにあった地域交流の場に発展させていきたいと考えています。
研究に対するこだわりがありますか?
「社会をより良くする」研究をしたいと思っています。そのためには、成果を発表して終わりではなく、社会に実装(還元)する活動もセットで行っていきたいと考えています。研究者としての視点プラス実践者としての視点を養えるよう、日ごろから幅広く知見を広げていくつもりです。
また、あまり常識に縛られすぎず、良い意味で「常識外れな」オリジナリティの高い研究を目指したいですね。
研究と日常生活を切り分けていますか?それとも同時進行でしょうか?
絶賛子育て中のため、“強い意志を持って”研究と日常生活を切り離し、家族との時間をつくるようにしています。
子どもがいなかったときほどガンガン研究を進められていませんが、今はそういうフェーズであると考え、業務中の効率をいかに上げるかを日々意識しています。
家事と子育ての取り組みは?
5:5(父:母)でできているかと。笑
でも、子どもが寂しい時などに甘えるのはやっぱり母親なので、今後は『パパがいい~』と言ってもらえるようにその壁をぜひ突破したいですね。
研究者としてのゴールはどのようなものでしょうか?
今後の研究人生を通して、高齢者の方々の「健康づくり」のみならず、「生きがいづくり」も考慮した介護予防を目指していきたいと思っています。
とはいえ、まだまだ具体的なゴールは見えていません。研究者としての“芯”は持ちつつも、柔軟な考えと行動力を意識して研究者としてのゴールを模索していくつもりです。